そこまで話して視線を落としたとたん、何かがちらりと視線に入った。
床に座った衛宮が両手を後ろについて上体を起こしている、その両手の間。
何か、ぴんく色の物体。というか布切れ。
あれって、・・・着替え用にロッカーに置いてた、あたしの下
「・・・・・・・・・・・・!」
―――――無言で、あたしは反射的に衛宮に跳びかかった。
正確には、衛宮の後ろに落ちているあたしのショーツめがけて。
「うわっ!!?」
こんなときに限って反射良く、がしっと両手を受け止められた。
衛宮最悪だ。最悪だ衛宮。
「いいから大人しくしろ。抵抗するな」
「いいい意味が解からねえ!?目が据わってるぞオイ!?」
ドスを利かせた声で衛宮に指示する。
「いいからだまれ。てをはなしてまえにまわせ」
速攻は失敗。全力で衛宮と力比べ中だが、このまま力押しして背後のブツにうっかり触られたら気づかれかねないし、倒れられて背中で潰されても取り返せない。
「・・・・・・・・・マジで」
「まじで。くうきよめ。かんがえるな。くちごたえもきんし」
「、・・・・・・・・・」
2、3秒間があって、ゆっくりと衛宮の手から力が抜け、前に出される。
それと同時に解放されたあたしの両手が衛宮越しに左右からブツを探し、結局左手が布キレを保護した。
そのほっとした瞬間、考えていない事が起こった。
衛宮の手が。
衛宮の手があたしの背中に回されて、抱きしめられていた。
なんで?
――――――――――あ。
混乱すると同時に、はたと思い当たった。
あたしは衛宮に飛びかかった。ブツを確保するために。
『てをはなして ま え に ま わ せ』と言った。ついでに考えるなと。
手が解放されたので、ブツを確保した。抱きついているような格好で。
うあああああ。
つまりあたし誘ってた?つーかむしろ強制!?
「ええええ衛宮」
「大丈夫だから」
ごめんそういうつもりじゃと言うつもりだったのに、衛宮の声の真剣さに思わず止まった。
「もう、あんな目には遭わせないから」
「・・・は?」
なんの話を、と思ったところであたしの記憶はもう少し前まで遡った。
押し倒す(そのつもりは無かった)直前。
『まあ怖い思いをしたみたいだってのは確かっぽくって正直今でも・・・』
これか。
元々この件は衛宮は責任を感じていた筈。
そこへ、あたしのこの言葉は結果的に衛宮を責める形になった。
更にあたしの襲撃+アホ発言は、あの夜のフラッシュバックに怯えていると受け取られたのか。
それなら、確かに衛宮なら。
―――――――こんなに、優しく抱きしめてくれそうな、気は、する。
「『あの夜』に関すること、これから話す。信じられないような内容だと思うけど」
誤解なんだけど。
このままでも、いいような。
そんな気がして、あたしは衛宮の胸に収まったまま頷いた。