彼女の疑問(1)-1
- 2008/07/26
- 21:21
放課後ちょっと顔貸して欲しいんだけど、という誘いに何ら訝る事無く衛宮は応じた。
ただ、じゃあ道場の方で、と言うとその返事にはほんの少し口調を濁した。
弓道部時代は休みの日もちょくちょく手入れや修繕を手伝わせてたが、やはり若干来づらいようだ。
そういえば、二限の休み時間に感じた妙な視線も今度は無かった。
「悪い、待たせたか」
「いや、んなことないよ」
弓道場前で落ち合い、中に入っていく。
「えっと」
「ああ、今日は射じゃないよ。あれはもうさせない。悪かった」
ひどく(多分)傷つけた事を思い出して先に否定しておいたが、その直後の事を思い出して若干気恥ずかしくなった。
休みの弓道場は静かだ。
衛宮を先導して、射場の脇を通り過ぎる。
「こっちの奥」
角を曲がると女子の更衣室と、倉庫があるだけで行き止まり。さりげなく衛宮と位置関係を入れ替えて退路側に立った。
「・・・ん、なんか備品?倉庫?」
「いや、別にどこって訳でもなかったんだけど。というか修理じゃなくてさ」
「ちょっと訊きたい事があって」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何だ?」
衛宮が『何か』に思い当たって、動揺を隠したのが判る。この男はとことん腹芸に向いてない。
「あたしさ」
腕を組んで、廊下の壁に寄りかかる。
「この度無事帰ってきたけども。ちょっと病院送りになってただろ」
「・・・ああ」
別に緊張してなかったはずなのに、衛宮のそれが少し伝染したようで、一息置いた。
「あれの、原因を衛宮知らないかなって」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
分かり易く衛宮が息を呑む。『まるで知らない』と即答せずに、そんな態度を取るだけで十分何か知ってますと言っているようなものなのだが、なんと言うべきか逡巡しているようだ。
無駄な嘘をつかせるのもイヤなので、先に逃げ道を塞いでしまおう。
「というかどういうスジかはちょっと言えないんだけど、衛宮はなんか知ってるってことは判ってるんだわ」
「な・・・」
「なんで、なるべく正直に。気ぃ遣わなくていいから、何があったのか知る限り率直に教えて欲しいんだけど」
今度こそはっきり動揺したところに、素直な思いをぶつけた。
「いわゆる暴行とかは無かったのは分かってるからさ、ホントあんまり気にしないで。それよかウソつかれる方がイヤだ」
言うべき事は言った。聞く者として自分なりに誠意は見せた。
後は、衛宮の答えを待つだけ。
十秒くらいたったか。そっか、と衛宮が口を開いた瞬間。
道場入口の扉が開く音が聞こえて、ばっ、と二人で顔を見合わせた。
ただ、じゃあ道場の方で、と言うとその返事にはほんの少し口調を濁した。
弓道部時代は休みの日もちょくちょく手入れや修繕を手伝わせてたが、やはり若干来づらいようだ。
そういえば、二限の休み時間に感じた妙な視線も今度は無かった。
「悪い、待たせたか」
「いや、んなことないよ」
弓道場前で落ち合い、中に入っていく。
「えっと」
「ああ、今日は射じゃないよ。あれはもうさせない。悪かった」
ひどく(多分)傷つけた事を思い出して先に否定しておいたが、その直後の事を思い出して若干気恥ずかしくなった。
休みの弓道場は静かだ。
衛宮を先導して、射場の脇を通り過ぎる。
「こっちの奥」
角を曲がると女子の更衣室と、倉庫があるだけで行き止まり。さりげなく衛宮と位置関係を入れ替えて退路側に立った。
「・・・ん、なんか備品?倉庫?」
「いや、別にどこって訳でもなかったんだけど。というか修理じゃなくてさ」
「ちょっと訊きたい事があって」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何だ?」
衛宮が『何か』に思い当たって、動揺を隠したのが判る。この男はとことん腹芸に向いてない。
「あたしさ」
腕を組んで、廊下の壁に寄りかかる。
「この度無事帰ってきたけども。ちょっと病院送りになってただろ」
「・・・ああ」
別に緊張してなかったはずなのに、衛宮のそれが少し伝染したようで、一息置いた。
「あれの、原因を衛宮知らないかなって」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
分かり易く衛宮が息を呑む。『まるで知らない』と即答せずに、そんな態度を取るだけで十分何か知ってますと言っているようなものなのだが、なんと言うべきか逡巡しているようだ。
無駄な嘘をつかせるのもイヤなので、先に逃げ道を塞いでしまおう。
「というかどういうスジかはちょっと言えないんだけど、衛宮はなんか知ってるってことは判ってるんだわ」
「な・・・」
「なんで、なるべく正直に。気ぃ遣わなくていいから、何があったのか知る限り率直に教えて欲しいんだけど」
今度こそはっきり動揺したところに、素直な思いをぶつけた。
「いわゆる暴行とかは無かったのは分かってるからさ、ホントあんまり気にしないで。それよかウソつかれる方がイヤだ」
言うべき事は言った。聞く者として自分なりに誠意は見せた。
後は、衛宮の答えを待つだけ。
十秒くらいたったか。そっか、と衛宮が口を開いた瞬間。
道場入口の扉が開く音が聞こえて、ばっ、と二人で顔を見合わせた。