薄暮迷宮5
- 2008/06/24
- 22:39
綾子の考察
あたしは洗い髪を乾かしながら、今日の事をぼんやり思い出していた。
『あの夜』、あたしに何が起こったのか、衛宮と遠坂はおそらく知っている。
直接どちらかに尋ねたら答えてくれるだろうか?
否、である気がする。
あの夜。
幸い身体に乱暴された跡は無かったし、すっ転んだ位以外の外傷もなかった。
それでも言えないような事ってなんだ?
それに、『魔術回路』。
これはやつら二人の間のなんらかの比喩、だと信じたい。
もうひとつ。大事な事を忘れていたことに気がついた。
(『社会復帰したあたしの為にここはひとつ!』)
――――――――あのときそれまで散々渋っていた衛宮があの一言で、急に射を見せる――――自らを晒す事を決めたのは、やっぱり『あの夜』に関して何か衛宮は負い目に感じていたから、と見ていいだろう。
しかし、これに関しては遠坂が『衛宮は関係ない』と断じていた。憶測でしかないが、衛宮の性分から考えるにこれはかなりの確率で遠坂が正しい気がする。
それと、遠坂の言う『あの馬鹿』の正体も知る必要がある。
身体をベッドに投げ出したところで、は――――と閃く。
―――――――――――――――これを知ることは、ちゃんと意味があるんじゃないか?
あたしが『あの夜』の事を正しく知って、衛宮に『やっぱりこれはお前のせいじゃない』と教えてやる事は、あの射を直してやる事に繋がってるんじゃないか?
正直言って、衛宮の射が何から来ているのかはさっぱり分からない。しかしこの無根拠な仮説は妙にストンと腑に落ちた。
あの射と、あたしの事件とは、関係があるのかもしれない。
根拠は薄い。衛宮に対するただの慰めなのかもしれないが、『あの夜』について調べるもう一つのモチベーションになる。
『あの夜』について知る手がかりは、遠坂と衛宮。もう一人、遠坂にあの馬鹿呼ばわりされてたのがいるけれどそれが誰だかは調べようが無い。
遠坂から聞き出すのはおそらく至難の業だろう。根本的にお人よしの衛宮を攻略する方がまだ可能性がある。
決めた。衛宮の口を割らせよう。方法は後で考える。
そこまで筋道をつけたところで、あたしは眠りに落ちた。
薄暮迷宮 了
あたしは洗い髪を乾かしながら、今日の事をぼんやり思い出していた。
『あの夜』、あたしに何が起こったのか、衛宮と遠坂はおそらく知っている。
直接どちらかに尋ねたら答えてくれるだろうか?
否、である気がする。
あの夜。
幸い身体に乱暴された跡は無かったし、すっ転んだ位以外の外傷もなかった。
それでも言えないような事ってなんだ?
それに、『魔術回路』。
これはやつら二人の間のなんらかの比喩、だと信じたい。
もうひとつ。大事な事を忘れていたことに気がついた。
(『社会復帰したあたしの為にここはひとつ!』)
――――――――あのときそれまで散々渋っていた衛宮があの一言で、急に射を見せる――――自らを晒す事を決めたのは、やっぱり『あの夜』に関して何か衛宮は負い目に感じていたから、と見ていいだろう。
しかし、これに関しては遠坂が『衛宮は関係ない』と断じていた。憶測でしかないが、衛宮の性分から考えるにこれはかなりの確率で遠坂が正しい気がする。
それと、遠坂の言う『あの馬鹿』の正体も知る必要がある。
身体をベッドに投げ出したところで、は――――と閃く。
―――――――――――――――これを知ることは、ちゃんと意味があるんじゃないか?
あたしが『あの夜』の事を正しく知って、衛宮に『やっぱりこれはお前のせいじゃない』と教えてやる事は、あの射を直してやる事に繋がってるんじゃないか?
正直言って、衛宮の射が何から来ているのかはさっぱり分からない。しかしこの無根拠な仮説は妙にストンと腑に落ちた。
あの射と、あたしの事件とは、関係があるのかもしれない。
根拠は薄い。衛宮に対するただの慰めなのかもしれないが、『あの夜』について調べるもう一つのモチベーションになる。
『あの夜』について知る手がかりは、遠坂と衛宮。もう一人、遠坂にあの馬鹿呼ばわりされてたのがいるけれどそれが誰だかは調べようが無い。
遠坂から聞き出すのはおそらく至難の業だろう。根本的にお人よしの衛宮を攻略する方がまだ可能性がある。
決めた。衛宮の口を割らせよう。方法は後で考える。
そこまで筋道をつけたところで、あたしは眠りに落ちた。
薄暮迷宮 了