ブラインド・デート再び!05
- 2008/03/30
- 18:43
「すいませんっ!すいませんっ!」
中武百貨店のベンチで、ユリ子が必死に謝っている。
「ま、いーよ。慣れてるし・・・」
数箇所の打撲に擦り傷。市中引廻しの刑に遭った割に地味な傷しかないのは日頃の鍛錬(?)の賜物か。
「そーだ、バンソーコならあります!」
と、ユリ子はバッグを探り始める。美神なら
「いつものセクハラを思えばこれくらいの事故は慰謝料の一部よね」
とのたまうが、この顔立ちを持つ人々は責任を感じてしまうらしい。ってそれが普通か。
「いや、たいした傷じゃないからいいって。少年マンガのレギュラーで破傷風なんてジミな理由で死んだキャラいないし・・・」
「ダメです!ばい菌入っちゃいます!」
ユリ子の剣幕に押され、大人しく手当てを受けていた。
(なんで女の子ってバンソーコーなんて持ち歩いてんだろう?)
と思いながら見ていたがあまりにマジメに手当てをしているので黙っていた。
「ん。サンキュ」
頬と肘。張り終えたところで横島が腕を引こうとするが、ユリ子は離さず白く小さな手を横島の頬のバンソーコーに優しく添える。
「え?」戸惑う横島。
「いたいのいたいのとんでけっ。」
ぱっ。
ユリ子が手を離して、にっこり微笑む。
「早く治るおまじないです!」
横島は一瞬あっけに取られていたが、頬のバンソーコに軽く手を添えると立ち上がった。
「あ、ああ。うん、なんか良くなったような気がするし、百貨店の中回ろうか」
「はい!」
いわゆる『イイ雰囲気』で二人は店内へ消えていった。
「「憎しみで人が殺せたら・・・!!!」」
たまたま通りがかった名も無きメガネのクラスメートとタイガーが、
暗く紅いオーラを発してピートをびびらせていたのはまた別の話。
日曜の百貨店は、季節の変わり目恒例のバーゲンも手伝って賑わっていた。
自然、女性服飾売り場が目に付く。
(洋服なんかはいいかもしれんが・・・織姫んときは散々だったからな-。それにそこまでの予算は無いし)
どーも横島の中ではアレはむしろ苦い思い出として残っていたようだ。
表情が微妙にゆがむ。
「あ」
ユリ子が小さく声をあげ、ワゴンの山に振り向いた。
「どしたの?」
「マフラーなんかいいかもしれませんね」
それは冬物一掃、マフラーのワゴンセールだった。
「あー、でも彼女持ってるぜ」
「別に二本持ってたっていいんですよ」
そうじゃないんですよ、女のコは!とユリ子は笑って横島を見上げた。
生き返ったおキヌを初めて見たときもマフラーをしていた。まあしかし
オシャレの組み合わせで何本持ってたっていいというのも正論だ。
「横島さんはマフラー持ってないんですか?」
「え?一本だけあるけど。寒いときはしてるよ」
ユリ子が視線を前に戻す。
「・・・もう一本買ったり、しないんですか?」
「いや、あの一本さえあればいいから」
はっ、とユリ子が息を呑む。
「だってそうやろっ!?今日のメシに事欠いてるんだぜ!?カシミヤだろーが
シルクだろーがマフラーは食えん!なんやかや理由をつけてでも美神さんとこ行って
メシにありつかん事には死んでまうっ!それとゆーのも・・・!」
だああああっとユリ子が豪快にコケていたが、某人物の悪口に熱中していた為横島は気づかなかった。
「っくしゅん!」
その頃事務所では美神がくしゃみをしていた。
「誰かうわさしてるわね。え・・・っと、横島クンの時給は1万円ってことにしておけば・・・」
知らない間に経費水増し脱税の片棒を担がされている横島だった。
中武百貨店のベンチで、ユリ子が必死に謝っている。
「ま、いーよ。慣れてるし・・・」
数箇所の打撲に擦り傷。市中引廻しの刑に遭った割に地味な傷しかないのは日頃の鍛錬(?)の賜物か。
「そーだ、バンソーコならあります!」
と、ユリ子はバッグを探り始める。美神なら
「いつものセクハラを思えばこれくらいの事故は慰謝料の一部よね」
とのたまうが、この顔立ちを持つ人々は責任を感じてしまうらしい。ってそれが普通か。
「いや、たいした傷じゃないからいいって。少年マンガのレギュラーで破傷風なんてジミな理由で死んだキャラいないし・・・」
「ダメです!ばい菌入っちゃいます!」
ユリ子の剣幕に押され、大人しく手当てを受けていた。
(なんで女の子ってバンソーコーなんて持ち歩いてんだろう?)
と思いながら見ていたがあまりにマジメに手当てをしているので黙っていた。
「ん。サンキュ」
頬と肘。張り終えたところで横島が腕を引こうとするが、ユリ子は離さず白く小さな手を横島の頬のバンソーコーに優しく添える。
「え?」戸惑う横島。
「いたいのいたいのとんでけっ。」
ぱっ。
ユリ子が手を離して、にっこり微笑む。
「早く治るおまじないです!」
横島は一瞬あっけに取られていたが、頬のバンソーコに軽く手を添えると立ち上がった。
「あ、ああ。うん、なんか良くなったような気がするし、百貨店の中回ろうか」
「はい!」
いわゆる『イイ雰囲気』で二人は店内へ消えていった。
「「憎しみで人が殺せたら・・・!!!」」
たまたま通りがかった名も無きメガネのクラスメートとタイガーが、
暗く紅いオーラを発してピートをびびらせていたのはまた別の話。
日曜の百貨店は、季節の変わり目恒例のバーゲンも手伝って賑わっていた。
自然、女性服飾売り場が目に付く。
(洋服なんかはいいかもしれんが・・・織姫んときは散々だったからな-。それにそこまでの予算は無いし)
どーも横島の中ではアレはむしろ苦い思い出として残っていたようだ。
表情が微妙にゆがむ。
「あ」
ユリ子が小さく声をあげ、ワゴンの山に振り向いた。
「どしたの?」
「マフラーなんかいいかもしれませんね」
それは冬物一掃、マフラーのワゴンセールだった。
「あー、でも彼女持ってるぜ」
「別に二本持ってたっていいんですよ」
そうじゃないんですよ、女のコは!とユリ子は笑って横島を見上げた。
生き返ったおキヌを初めて見たときもマフラーをしていた。まあしかし
オシャレの組み合わせで何本持ってたっていいというのも正論だ。
「横島さんはマフラー持ってないんですか?」
「え?一本だけあるけど。寒いときはしてるよ」
ユリ子が視線を前に戻す。
「・・・もう一本買ったり、しないんですか?」
「いや、あの一本さえあればいいから」
はっ、とユリ子が息を呑む。
「だってそうやろっ!?今日のメシに事欠いてるんだぜ!?カシミヤだろーが
シルクだろーがマフラーは食えん!なんやかや理由をつけてでも美神さんとこ行って
メシにありつかん事には死んでまうっ!それとゆーのも・・・!」
だああああっとユリ子が豪快にコケていたが、某人物の悪口に熱中していた為横島は気づかなかった。
「っくしゅん!」
その頃事務所では美神がくしゃみをしていた。
「誰かうわさしてるわね。え・・・っと、横島クンの時給は1万円ってことにしておけば・・・」
知らない間に経費水増し脱税の片棒を担がされている横島だった。