彼女の細い腰周りを抱きしめる腕にふっと重みを感じることで、桐花の体が弛緩した事に気づいた。
荒い息のまま、彼女の右腕―――黒革の拘束具をに手を伸ばし、カチリという音と共に外す。同様に左腕、両足の拘束具をはずしてベッドの下に落とすと、晴れて彼女は自由の身だ。
「はぁ…ぁん…一刀様、素敵…」
仰向けだった体を横半身にして、目を閉じたまま抱きついてくる彼女を抱き返して髪を撫でる。
「んぅん……愛してます…」
「ありがと、俺もだよ」
「知ってます…でも嬉しいです」
「喜んでくれると俺も嬉しいよ。ところで痛いところ無い?」
「ありません、これ全然痛くないです。やっぱり大きいと違いますね」
そう言いながらプラプラと拘束具を振る桐花。
初めに彼女が持ってきたものよりもずっと拘束面積が大きく、以前は縄のように食い込んでいたのが面で受けるようになったので痛くないらしい。
『痛いのがまたいい』という桐花をどうにかこうにか説得して改善させ、色々研究に付き合わされてたが結果が出てよかった。よかった…のか?
「でも痕がつかないのって、雌奴隷としましてはなんかちょっと淋しいような気も…」
「いや、止めましょうよ桐花サン」
「桂花とか、あっちの(派閥の)連中に見せ付けられないんですよね…」
「うんだからそれはちょっとねぇ」
やめて欲しいんだけどなぁ、と言ってもこの子も聞かないけど。
「ねえ一刀様ぁ、桂花よりずっといいですよね?」
「桐花がすごくいいっていうのは十分認めるけど、比較はしない方向でお願い」
「ええー…だって私達の方が愛に溢れてるじゃないですか…あっちはただの強姦プレイですよね?しかも犯る側がやらされているという」
「…そんなことは無いよ、分かりにくいけどあれはあれで愛し愛されてるから」
「むー…かぷ」
「気持ちいいけど噛まない噛まない」
肩を甘噛みしながら舌で舐めてくる桐花の頭を撫でる。
「はぁい…でもいいです、わたし愛されてますから。…あ、そうです華琳様ともこういうプレイされましたよね。どうでした!?どうでした!?」
「女の子のそういう個人情報をんなホイホイ喋れないよ!」
桐花は桂花達に対抗意識も強いけど、自分と同じ系統の娘やプレイについてはこういう時でも平気で話すというか話させるところがあるし、気に入ったものがあれば取り入れようとするのは…なんというか、公私共に研究熱心というか感心するけど。
「華琳様は『一刀も喜んでくれたみたいだし、結構良かったわ』って言ってましたよ」
「自分で喋ってた!?」
「それに『一刀も私に面と向かっては言いづらい事もあるでしょうから、一刀の感想も聞けたら聞いておいて』って言われてますから。ねえ、どうでした?」
…華琳さーん。
多分幼児プレイをやったのはその後の筈で、『コレしばらく嵌りそう』と言ってたのはきっと華琳の為にも桐花の為にも言わないほうが良いんだろう。
「…んー…良かったよ。普段見れない華琳って感じで」
「元上司でツンデレで魏王で奴隷って与条件としては最高ですよね、ちょっと羨ましいです。のーぱん首輪で足舐めから入って下さいって助言差し上げたんですけれど、そうされてました?」
「あんまり具体的な話はよそうよ!」
あれは桐花の入れ知恵だったのか!
桂花と稟の入れ知恵をアレンジしたらしい『魏王を捕縛陵辱して愛奴化』の続きだった事も言わないほうが良いんだろう。妙に一連の流れが良く出来ててさすが何でも出来る華琳だなと思ったらこういう事だったのか。
「そんな事より、今は二人で仲良くしよう?」
「んふ…あ、すみません後一つだけ。田豊と沮授の事ですけれど」
「純と静?」
彼女を抱き寄せると、肩にしがみつかれながら冀州の二人の名を出された。
「あの娘たち羞恥責め大好き。先日相談を受けたんですけれど、縛りとかお尻ぺんぺんとかは反応薄かったのに、鏡の前でじわじわ脱がしてもらった話をしたら羨ましそうに眼潤ませてぼうっとしちゃって。気に入ったみたいで『お願いしたら』って言ったんですけれど、『恥ずかしくできない、お尻にも欲しいのにお願い出来てない』って言ってますから、一刀様からしてあげてもらえませんか?」
「…彼女達が本当に希望してるか、俺なりに掴ませてもらった上で考えるよ」
「もう、一刀様ったらほんと慎重!私が直に聞いてますから『いいから尻でもやらせろ』で宜しいのに。あの娘たち、一刀様から聞かれたら遠慮して『どっちでもいい』って答えますからね?私一刀様のそういうヌルいところも大好きですけれど、もっと好き放題された方が喜ぶ女多いですよ?」
「うーん…」
真顔で言う桐花の言葉には思い当たる節は無くはない。エッチな意味を抜きにしても、『どうして欲しい?』って聞くと『好きなようにしてもらえればいい』って答えて、自己主張も少ない娘たちは結構いる。
「うちで言えば仲達とか士載とか、あと凪とか流琉、呉や蜀にも同じようなのいるんじゃないですか?大丈夫ですよ一刀様なら、やりたい放題やったってあの娘達の嫌がる事なんて出来ませんから」
「…参考にはさせてもらうよ」
これだけの娘達に愛されて、せめて彼女達の心に適わない事はしないようにしようと思ってはいる。けれど彼女達が口に出さない希望まで察して、出来る限りそれに沿えるようにするのも俺には必要な事だろう。
「女は愛されたい、大事にされたいとも思いますけど、求められたいとか、安らがせてあげたいとも思ってますから。…んふ、ねぇ一刀様」
「うん」
体を起こして笑みを浮かべた桐花の瞳には、妖しい光が宿っていた。
「私は一刀様の男の、雄の本能を満たして差し上げたいなぁって、思ってるんですよ?一刀様はいつも周りの女に気を遣って、相手の望むように接してあげて抱いてくれますよね?その一刀様が、御自分の欲望のままに私を隷従させて、性玩具にして、犯して、雌に堕としてイき狂わせて…御自身の欲求をわがままに私の身体で発散してくれると思うと、私の自尊心…『ぷらいど』、でしたっけ…は凄く、すっごく満たされるんですよ?私が、…私も、女として一刀様のお役に立ててるって、求められてるって…。うふ…もう、こうして話してるだけで溢れちゃって止まらないくらい…ねえ、一刀様…寝床で他の女の話をする女って、駄目ですよね?」
「…そうだね、あんまりね」
情欲に潤んだ彼女の瞳に、もう、魅入られている。
「そんな女には、ねぇ、『お仕置き』…きっつーいの、必要じゃありませっ、あんっ」
顔の上から熱い吐息で囁いた彼女をひっくり返してベッドに伏せさせ、背中から片手で抱きしめながらもう一方の手で彼女に目隠しをする。
「いいか桐花。お前はごちゃごちゃ言ってないで俺に虐められてよがり泣きしてればいいんだよ。…お仕置きして欲しい雌犬にお仕置きなんてただの御褒美だろ?イキ狂って、自分の立場を理解するまで…『躾け』の時間だ」
「あっは、素敵……駄目な雌犬に、いっぱい躾け、下さい」
その最中は、なりきる。言ってて恥ずかしいとかは今は忘れて、喜色に緩んだ表情を浮かべる彼女を大鏡の方へ抱きかかえて行った。
君を虐めさせてくれ桐花。俺なりの、我侭で。