今日の我らが生徒会長01
- 2008/03/29
- 23:57
―――――坂上先輩は我らが生徒会の会長である。
優れた手腕で学生活動を引っ張っていってくれるすばらしき先輩である。
今日は創立祭のスケジュール会議。部やクラスの代表が集まり、使用したい場所や搬入・搬出の予定を立てるのだ。もうすぐ二時半、会議が始まる。長丁場になりそうで、ちょっと憂鬱だ。
席に着くと、会長がおもむろに口を開く。
「うん、では会議の前に諸君にお願いしたい事がある」
「…は?」
「会議室は5時まで取ってあるが、4時までに会議を終えたい。あまりだらだら会議をしていても、実のある議論にならないからな」
隣の副会長が一瞬しまった、と言う表情を浮かべる。が、心得たもので出席の各代表は完全なポーカーフェイスで頷く。私も表情を変えない。ああ、一年生のクラス委員だけがポカーンとしている。
…ま、そのうちわかるから良いだろう。習うよりも慣れろ、だ。
「――――でラグビー部の使用場所は――――で――時から―――」
私の仕事は議事を書きとめて置き、議事録として残す事だ。世間ではそれを書記と言うらしい。じゃあ書記長って何する人なんだろう?
「(…今日は外してもらうはずだったと思うが?)」
「(止めとくって聞いていたんですが!)」
副会長に耳打ちされ、あわてて答える。副会長の声には若干の非難とイラつきが含まれていた。
私は悪くない。確かに、彼から聞いたのだ。
「(…急に変更になったということか)」
副会長が呟く。
「(そうだと思います)」
こくこく、と頷く。って私仕事しなきゃ。
「(……ということは『電池切れ』が近いと言う事か。しまったな、ここのところ会長に仕事をさせ過ぎたか)」
『彼』には事前にこういう日は遠慮してもらうよう伝えており、了承してもらっている。ということは、予定が変更になったのは坂上会長の強い意向によるものなのだろう。あまり仕事が詰まっていないうちは良かったが、ここのところ文化祭の為『会長にとってはかなり』ストレスを溜めてしまうことになり、今日は会議があるのを承知で、会長は急遽変更を決めてしまったのだ。
副会長の苦虫を噛み潰したような呟きは、聞こえない振りをした。
コチ。
会議室の時計の長針が進む、ほんのかすかな音に反応して会長の視線が上がる。
学校の時計は秒針が無く一分単位で進むのはいつも不思議に思っていた。
いやそんな事は置いといて。
三時四十分。
マズイ。マズイかもしれませんよこれわ。
――――――会長のはじめの口ぶりからして、ほぼ確実にリミットタイムは四時――――で、間違いないだろう。なんて分かりやすい人なのだ。ああ可愛いなぁもう。
「うん。で、E組の申請予算の内訳なんだが――――の費目の―――――」
案の定、会長の表情には焦りが見え始めている。
各代表も気配を感じてペースアップに協力しているが、正直このペースだときっと、四時には、終らない。
三時五十三分。
「あ、ああ、そうなんだがバレー部とその時間はぶつかってしまうから調整が必要だな。代表者同士で話してくれ、次に美術部の―――――」
既に誰が見ても分かるくらい目に見えて焦っている。一同に気まずい雰囲気―――いわれの無い罪悪感みたいなものが漂うが、それぞれ部やクラスの代表できているのだ。じゃあわたしんとこはいいのでこれで終わりに、とは誰も言えない。
会長は議事を進めながらちらちらと窓の外――――――三年の某教室の方を見ている。
あ、今日は教室で待ち合わせなんですね。
そろそろですか、と副会長に目線で合図する。
副会長が軽く頷いた。
「(伝令、行ってくれ)」
「(はい)」
ついに副会長から指示が出た。久々の伝令だ。
私は静かに席を立ち、会議室を後にし駆け出した。三年生の通いなれた某教室へ。
「岡崎さん!」
「おう、弘子ちゃんか」
夕日の差す教室で机に腰掛け、お疲れ、と労われた。
「あの、会長なんですけども、今日は会議で多分―――五時くらいまでかかりそうです」
「ああ、やっぱな。じゃあ智代には焦んなくて良いから、と伝えておいてくれ」
「あ、はい、でもあの、もうすぐ会長がいらっしゃると思います」
「え?そうなのか?」
「ええ、会議は――――――――――」
優れた手腕で学生活動を引っ張っていってくれるすばらしき先輩である。
今日は創立祭のスケジュール会議。部やクラスの代表が集まり、使用したい場所や搬入・搬出の予定を立てるのだ。もうすぐ二時半、会議が始まる。長丁場になりそうで、ちょっと憂鬱だ。
席に着くと、会長がおもむろに口を開く。
「うん、では会議の前に諸君にお願いしたい事がある」
「…は?」
「会議室は5時まで取ってあるが、4時までに会議を終えたい。あまりだらだら会議をしていても、実のある議論にならないからな」
隣の副会長が一瞬しまった、と言う表情を浮かべる。が、心得たもので出席の各代表は完全なポーカーフェイスで頷く。私も表情を変えない。ああ、一年生のクラス委員だけがポカーンとしている。
…ま、そのうちわかるから良いだろう。習うよりも慣れろ、だ。
「――――でラグビー部の使用場所は――――で――時から―――」
私の仕事は議事を書きとめて置き、議事録として残す事だ。世間ではそれを書記と言うらしい。じゃあ書記長って何する人なんだろう?
「(…今日は外してもらうはずだったと思うが?)」
「(止めとくって聞いていたんですが!)」
副会長に耳打ちされ、あわてて答える。副会長の声には若干の非難とイラつきが含まれていた。
私は悪くない。確かに、彼から聞いたのだ。
「(…急に変更になったということか)」
副会長が呟く。
「(そうだと思います)」
こくこく、と頷く。って私仕事しなきゃ。
「(……ということは『電池切れ』が近いと言う事か。しまったな、ここのところ会長に仕事をさせ過ぎたか)」
『彼』には事前にこういう日は遠慮してもらうよう伝えており、了承してもらっている。ということは、予定が変更になったのは坂上会長の強い意向によるものなのだろう。あまり仕事が詰まっていないうちは良かったが、ここのところ文化祭の為『会長にとってはかなり』ストレスを溜めてしまうことになり、今日は会議があるのを承知で、会長は急遽変更を決めてしまったのだ。
副会長の苦虫を噛み潰したような呟きは、聞こえない振りをした。
コチ。
会議室の時計の長針が進む、ほんのかすかな音に反応して会長の視線が上がる。
学校の時計は秒針が無く一分単位で進むのはいつも不思議に思っていた。
いやそんな事は置いといて。
三時四十分。
マズイ。マズイかもしれませんよこれわ。
――――――会長のはじめの口ぶりからして、ほぼ確実にリミットタイムは四時――――で、間違いないだろう。なんて分かりやすい人なのだ。ああ可愛いなぁもう。
「うん。で、E組の申請予算の内訳なんだが――――の費目の―――――」
案の定、会長の表情には焦りが見え始めている。
各代表も気配を感じてペースアップに協力しているが、正直このペースだときっと、四時には、終らない。
三時五十三分。
「あ、ああ、そうなんだがバレー部とその時間はぶつかってしまうから調整が必要だな。代表者同士で話してくれ、次に美術部の―――――」
既に誰が見ても分かるくらい目に見えて焦っている。一同に気まずい雰囲気―――いわれの無い罪悪感みたいなものが漂うが、それぞれ部やクラスの代表できているのだ。じゃあわたしんとこはいいのでこれで終わりに、とは誰も言えない。
会長は議事を進めながらちらちらと窓の外――――――三年の某教室の方を見ている。
あ、今日は教室で待ち合わせなんですね。
そろそろですか、と副会長に目線で合図する。
副会長が軽く頷いた。
「(伝令、行ってくれ)」
「(はい)」
ついに副会長から指示が出た。久々の伝令だ。
私は静かに席を立ち、会議室を後にし駆け出した。三年生の通いなれた某教室へ。
「岡崎さん!」
「おう、弘子ちゃんか」
夕日の差す教室で机に腰掛け、お疲れ、と労われた。
「あの、会長なんですけども、今日は会議で多分―――五時くらいまでかかりそうです」
「ああ、やっぱな。じゃあ智代には焦んなくて良いから、と伝えておいてくれ」
「あ、はい、でもあの、もうすぐ会長がいらっしゃると思います」
「え?そうなのか?」
「ええ、会議は――――――――――」