「・・・どうなんだ?」
「問題ないわね」
襖を後ろ手に静かに閉めて、ツインテールの薬師さまはそうおっしゃった。
「魔力の痕跡は一切無し、今は寝てるだけよ。単純にメンタル面か、体調面の問題だと思う。具体的には、多分ただの過呼吸」
「そうか・・・」
顔色も良くなってきていたので大丈夫だろうと思ってはいたが、ほっと胸を撫で下ろす。「ま・・・多分。精神的な問題と思うわ。過換気症候群って言うんだったかしら」
「・・・・・・精神的、か・・・・・・・・・」
倉庫であんな話をした上で、美綴にとっては近寄りたくなかっただろう『あの場所』へ
連れていった。それが彼女の精神に負担をかけたのか。
迂闊。
迂闊すぎる。それは十分想像出来たはず。
「・・・・・・なんかあんたの顔見てると、相当勘違いしてるって女のカンが叫んでるわ」
「・・・いや、別にしてないと思う、けど。なんでそこに女のカンが出てくるんだ?」
「あたしは女だからよ」
なんだか遠坂の目つきが剣呑なものを帯びているのを見て、思わず眼を逸らす。
「えっと、それより美綴の替えの服は?」
「あたしのがあるわよ。起きたら私から渡しておくから心配無用よ」
「そ、そうか。有難う」
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「「あ”」」
「あら、桜じゃない。どうしたのこんな夜に」
「あ、い、いえ大した用じゃないです!じゃ先輩コレですから宜しくお願いします、それじゃ!」
「お、おう!ありがとな桜!」
桜は慌てて逃げ・・・もとい、帰って行った。
うん、大丈夫。最悪、桜は巻き込まずに済んだ。
あとは俺がこの目の前の赤い悪魔をやり過せるかだが。
「なによその紙袋」
「いや大したものじゃないそれより美綴見てやってくれよ遠坂」
「・・・怪し過ぎるわあんた。いいから見せなさい」
「だが断る。・・・いや、言葉が過ぎました勘弁して下さい遠坂様」
「・・・ほほう?偉くなったわね衛宮くん」
ごめん親父、やっぱ無理みたいだ。
(弱い者が強い者に制圧される場面は教育上よろしくない為割愛させて戴きます)
「なによこれ。桜の服じゃ・・・・・・・・・・・・へぇ・・・」
「ち、違う!俺が言ったんじゃねぇ!美綴がっ、美綴がそのちょっとばかりキツいから他にないかって話聞けくぁw背drftgyふじこごっ!?」
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「じゃ、あたしんちこっちだから、ここで。悪いな、服まで借りちゃって」
「ううん、気にする事ないわ。
(・・・ちょっと位デカイからっていい気になってんじゃないわよこの茶ガッパ?)」
「え?」
「ん、なんか言ったかしら?」
「あと、挨拶出来なかったんだけど衛宮は?」
「あ、今道場の方でぶらさがりの修行中だから手が離せないって。宜しく言っとくわ。それじゃ、おやすみ」
「・・・・・・・・・?あ、ああ、おやすみ」
かくて夜は深けゆき、某家の道場ではタロットカードのそれ宜しく吊られた男が居たとか居なかったとか。