思いのたけを、全力で肘へ04
- 2008/03/29
- 23:39
「『そんな心配よりも、強烈な想いを持つ彼女達を押しのけて、どうやったら祐一さんの心を射止められるかを考えていた方が建設的ですよ?』」
「…は?」
軽い既視感―――――そうか、さっき全く同じ言葉を倉田先輩が言っていたからか。
これだけだったら、なんてことのない話。同じ言葉を繰り返しただけ。
なのに心が総毛立つ。
だって私達は知っている。
この人は無意味にそんな事を言わない。しかも絶対にこれはアドバイスでない。
たとえるなら、ゲームで自分が勝つ直前に敗者たちに敗れた訳を種明かしをするような。
そんな台詞だと経験が言っている。
「………それは、どういう、」
動揺を隠そうともせず、美坂先輩が問い返す。半ば無駄だと知りながら。
気づかなかったのか、既に歩き始めていた倉田先輩はカラン、とドアに取り付けられた鈴を鳴らしながら店を出て行った。
――――――――――と。店を出たところで倉田先輩が立ち止まった。
っていうか、百花屋が面した通りの右を見て、向日葵のような笑顔で手を振る。
倉田先輩に、駆け寄る『誰か』。
二、三言何かを話す二人。
『誰か』に腕を絡め、頭を相手の肩に預けて歩き出す倉田先輩。こちらに背を向けて。
いや、誰かってそりゃ相沢さんなんですけどね。
あんまり認めたくなくてつい。
あ、今空いてる手でこっちに手ェ振った。相沢さんからは見えないんだろうなー。
喫茶店に残された負け犬女二人は、ほんとに馬鹿そうに四人席の片側に並んで呆けていた。
「美坂先輩、私倉田先輩ホント嫌いです」
「あら奇遇ね、あたしもよ」
「………インナー買いに行く、って言ってましたよね」
「………言ってたわね」
「………………今、腕組んでましたよね」
「……………………………………そうね」
「……………………………倉田先輩カーディガン脱ぐ時、なんか不自然に揺れてませんでした?」
「…………………………………………………………………………そうだった、かしらね」
さすがに美坂先輩の顔色が変わった。
あぁ生チチですかそうですか倉田先輩こっちが持たざる者だと知っててやりたい放題やってくれやがりますねホントに呪い殺しますよ?
もういい。もうなんかいくらでも自虐的な気分。日本語になってませんが。
あぁ今日に限って相沢さんに泣くまで虐められたい。いや鳴くまでか。壊れかけてますね私。
「買ったら絶対着けて見せますよね」
「倉田先輩だからね」
「上下揃いにして両方見せますよねきっと」
「まあ、倉田先輩だから、ね」
「『さて、来る時に着けてた下着はどこでしょう?』くらい言いますよね?」
「…倉田先輩、だからね」
「『脱がせるのは祐一さんのお仕事ですよ♪』くらい言いますよねぇ、」
「そろそろやめなさい天野さん…って、泣いてるじゃないの」
あら気がついたら目から心の汗をかいていました。
とりあえず翌朝相沢さんは美坂先輩に問答無用で剛拳二発しばかれていました。
もちろん一発は私の分で。
END
「…は?」
軽い既視感―――――そうか、さっき全く同じ言葉を倉田先輩が言っていたからか。
これだけだったら、なんてことのない話。同じ言葉を繰り返しただけ。
なのに心が総毛立つ。
だって私達は知っている。
この人は無意味にそんな事を言わない。しかも絶対にこれはアドバイスでない。
たとえるなら、ゲームで自分が勝つ直前に敗者たちに敗れた訳を種明かしをするような。
そんな台詞だと経験が言っている。
「………それは、どういう、」
動揺を隠そうともせず、美坂先輩が問い返す。半ば無駄だと知りながら。
気づかなかったのか、既に歩き始めていた倉田先輩はカラン、とドアに取り付けられた鈴を鳴らしながら店を出て行った。
――――――――――と。店を出たところで倉田先輩が立ち止まった。
っていうか、百花屋が面した通りの右を見て、向日葵のような笑顔で手を振る。
倉田先輩に、駆け寄る『誰か』。
二、三言何かを話す二人。
『誰か』に腕を絡め、頭を相手の肩に預けて歩き出す倉田先輩。こちらに背を向けて。
いや、誰かってそりゃ相沢さんなんですけどね。
あんまり認めたくなくてつい。
あ、今空いてる手でこっちに手ェ振った。相沢さんからは見えないんだろうなー。
喫茶店に残された負け犬女二人は、ほんとに馬鹿そうに四人席の片側に並んで呆けていた。
「美坂先輩、私倉田先輩ホント嫌いです」
「あら奇遇ね、あたしもよ」
「………インナー買いに行く、って言ってましたよね」
「………言ってたわね」
「………………今、腕組んでましたよね」
「……………………………………そうね」
「……………………………倉田先輩カーディガン脱ぐ時、なんか不自然に揺れてませんでした?」
「…………………………………………………………………………そうだった、かしらね」
さすがに美坂先輩の顔色が変わった。
あぁ生チチですかそうですか倉田先輩こっちが持たざる者だと知っててやりたい放題やってくれやがりますねホントに呪い殺しますよ?
もういい。もうなんかいくらでも自虐的な気分。日本語になってませんが。
あぁ今日に限って相沢さんに泣くまで虐められたい。いや鳴くまでか。壊れかけてますね私。
「買ったら絶対着けて見せますよね」
「倉田先輩だからね」
「上下揃いにして両方見せますよねきっと」
「まあ、倉田先輩だから、ね」
「『さて、来る時に着けてた下着はどこでしょう?』くらい言いますよね?」
「…倉田先輩、だからね」
「『脱がせるのは祐一さんのお仕事ですよ♪』くらい言いますよねぇ、」
「そろそろやめなさい天野さん…って、泣いてるじゃないの」
あら気がついたら目から心の汗をかいていました。
とりあえず翌朝相沢さんは美坂先輩に問答無用で剛拳二発しばかれていました。
もちろん一発は私の分で。
END