風呂は女の社交場
- 2009/01/12
- 22:56
はあぁぁ、と思わず溜息が出る。
「ごっくらくよねぇ・・・」
応えるように隣で相棒が呟く。
湯船の縁に身体を預ける。
広い浴場に、私と虎子の二人だけ。
ランスを頂点とした織田家は、各地の治安や政情回復に忙殺されていた。
まあ実際にはウルザさんや愛様、真田様や義景様達が知恵を絞って、信頼できる武将や元領主達に各地で実施させていてランス自身は相変わらずだったらしい。
(私はその『相変わらず』な現場は見てないけれど愛様の溜息からまあ間違いないだろうと思う)
私は佐渡と尾張を行ったり来たりだったのだけれど、今回は愛様から佐渡の状況を報告するよう召集がかかっていた。
私達の出番の会議は午前中で終わってしまったので今日は早々に上がらせてもらい虎子と大浴場へしけこんでいたのだ。
ところで私と虎子は気色悪い間柄ではなく単に仲の良い同僚なのでそこんとこよろしく。
湯はぬるめ。
これなら何時間でも入っていられる。
「夕べ尾張着いていきなり今朝会議だったからしんどかったわねー」
「でも午後にゃあこーしてノンキにお湯に浸かってられるんだからまあ良い御身分でしょ」
手拭いで軽く顔を拭く。
「ところで謙信様、また少し可愛くなってない?」
「あー思った。髪の結い方もちょっと変わったよね」
「前のキリッとした謙信様も美形って感じでステキだったけどねー、今はすっごい可愛いって感じ」
「あー・・・」
武将なんてやってるが、虎子も私も今時の女の子だ。この手のしょうもない話は暇潰しにはもってこいではある。
「戦も無いしね。男出来るとやっぱああなんじゃん?」
「オトコ、ねー・・・」
多分二人して、笑い方とかもろもろ下品なあの男の顔を思い浮かべてる。
それと掛かり結びのように思い浮かぶのが愛様の溜息をつく顔。
「・・・・・・愛様、大変よねー」
「・・・んー。とは言え半分は自業自得かと」
そーいやそーかと話していると、がららららと入り口のガラス戸が開けられた。
「あ」
「・・・む」
浴場へと入ってきた、ふわふわ髪の小柄な女性と目が合った。
「・・・失礼するぞ」
独り言のように言うと、その人は洗い場へと向かった。
えーとたしか、あの人は毛利てるさん。
前来た時の会議で、愛様となんかバトルやってた人だ。早々に上がってしまおうか、と思っていたらてるさんは簡単に体を流して湯船へ入ってきた。
ふう、とあたしがしたようにてるさんも息をつく。
間の悪い沈黙。
流石に他家の人がいる前で上司たちの与太話をしているわけにもいかない。
なんとなく居心地が悪いので、もう少しうだうだしてたかったけど上がろうかと思ったところでてるさんの方から話を振ってきた。
「おまえ等はあれか。あのデコ女のとこの部下か」
「・・・えーっと。何人か思い当たる方がいらっしゃるんですが」
「ツリ目で、眼鏡の無い奴だ」
これなら愛様一択。
「あ、ハイ」
「あんなのが上司じゃ息が詰まるだろう」
「えーとまあ、あはは。まあ慣れてますし、愛様仕事はきっちりやって下さいますんで」
そーですね、とも言えないし適当な相槌を打ってみる。
てるさんは気持ち良さそうに瞑目しながら呟いた。
「・・・しかしあれだな。謙信は、アレはいい女だな」
「そうですか、有難う御座います」
「あれが相手では、きくもなかなか」
そこまで言って、てるさんはさっきあたしがしたのと同じように一旦手拭いでその小さな顔を拭いた。髪のボリュームのせいかものすごい小顔に見える、いいなぁ。
「苦戦するだろうな」
きく。えーときくさん、って確か妹さん?だったっけ?
「あの失礼ですが、きくさんってあの瞳キラキラした方?」
「いや、これの方だ」
言いながらてるさんが指で目尻を吊り上げてみせる。あぁ、あの方のほうか。
しかしということは、ひょっとしてきくさんもアレなのかしら?
謙信様と同じ病気?
「そうだな。しかしあれは惚れてるというより」
腕組みをする。
可愛い顔してそういう仕草はなんとなくミスマッチ。
「色惚けだな」
はあ。
「・・・・・・どんなところが?」
「ふむそうだな。まあ色々あるが」
てるさんが考えるように天井を見上げる。
「大陸の料理の本が突然増えたな、しかもランスの好物ばかり。朝起きて台所へ行ったらへんでろぱだらけの中できくが寝ていた事もあったな」
「ほほー」
うあ可愛い。
これはまた謙信様とは違った可愛さだ。しかもあの顔、あの喋りでですか。
「箪笥の奥に口紅を隠し持つようになったな。結局恥ずかしいらしくて薄いリップしか使っていないようだが」
「可愛いじゃありませんかぁー」
虎子が果てしなく嘘くさい相槌を打ちながら、私には自分の箪笥の奥を知ってる姉が居なくて本当に良かったと思った。
「他にはどんなところが?」
「そうだな・・・どうやって手に入れたのか知らないが、本棚の奥に大陸の下着カタログを隠すようになったかと思うとその頃から下着の数が異様に増えたな。ランスに呼ばれた日の夕方なんて自室の鏡台の前でえへへだの言ってくねくねしたかと思うと落ち込んだり、見ていて我が妹ながら気色悪いと可愛いの境目だ」
「………」
ダメだ。次、きくさんに会った時に噴き出さない自信が無い。
だのに止まらないのは人の性。
「いやいや、十分可愛いですよある意味謙信様よりも。で、もっとないですか」
「ふむ…本棚の奥と言えば日記もかなり傑作なんだが、あれは実物を読まないと面白さが伝わらんからな」
「毘沙門天に誓って口外しませんので、それ拝見出来ます?」
虎子がかなり激しく毘沙門天の格を下げたが正直私も見てみたい。
「ま…妹のプライベートだからな。見せるとは言えないんだが、さて、そろそろ上がるか?日本酒くらいあるんだろう」
酒と取引ってことですか。
「もちろんいいのがありますよ」
「じゃ、あたし達も」
三人でざぱ、と湯船から上がるのと同時にがらら、と浴場の扉が開いて現れたのは。
「「ぶふっ」」
「・・・噂をすればなんとやらだな」
てるさんが私たちだけに聞こえるように呟いた。
「な、なんだよ」
自然三人の視線が集まる先で、きくさんが手拭いで隠すように身をよじる。
「失礼しました、ちょっと湯冷めしてしまいまして」
「すみません」
二人して鼻元を押さえるフリして死ぬほど笑いそうになってる顔を隠しながら、すれ違いざまにきくさんをチラ見した。
すごい。
ぷるっぷるでばいんばいん。
いわゆる美巨乳。名取様のもすごいけど。
ちなみに謙信様のは私の中では美乳に分類されている。
あと私たちのモノについては触れてくれるな。
(なにあれ)
(スゴイよね)
虎子とアイコンタクトして脱衣所へ上がろうとしたところで、てるさんが浴場を振り返った。
「ああ、きく」
「ん、なんだよてる姉」
「我はこいつらと酒を飲んでいる。まあゆっくり浸かって、気が向いたら来るがいい」
「?・・・ああ、わかった」
きくさんがきょとんとしている。まあ珍しい取り合わせだし無理もない。
がらがらぴしゃ。
「でもなるべくごゆっくり~」
引き戸を閉めたところで虎子が小声で呟くと、三人して含み笑いをもらす。
「では我は部屋に居るから、それなりにいいのを持って来い」
「はーい」
てるさんに軽く返事をして、上杉家用倉庫へ向かう。他家の偉い人とこんなに親しく話したのは初めてだ。
「てるさん、恐そうな人だと思ったけどね」
「割とそうでもないね」
「でもあんな姉は」
御免だけどね、と言って軽く笑った。
やっぱ純米よね。吟醸か、大吟醸・・・は偉い人同士の贈答用だから流石にまずいか。じゃ、吟醸で無名のいいやつを。明日は休みだし、今日は心置きなく。
「それでは上杉家、直江愛が腹心勝子と虎子。いざ毛利陣へ」
「突撃ーっ」
久々に浮かれた気分で、パタパタと毛利家の部屋へあたし達は駆け出した。
--------------------------------
ぱたん、と障子が開けられる音がした。
「ほら、あんた達休みとは言え何時まで寝てるの」
「あー・・・愛様。おやようございます」
「おはよう、ね。寝起きのところ悪いんだけど貴女達、毛利のきくさん知らないかしら。夕べから失踪しちゃってるらしいんだけど、てるさんと貴女達と一緒に飲んでたらしいじゃないの」
寝転んだまま、虎子に呼びかける。
「あ・・・あー、虎子ぉ・・・。きくさん、いなくなっちゃったって」
「んあ・・・?」
虎子も寝ぼけてる。
「やっぱかぁー」
「そーよねー・・・ふぁ」
ぐでー、としたまま二人で答える。上司だよなぁ、まずいよなぁこの態度と思うけど体が無理。
「何か知ってるの?貴女達」
「えっとぉー」
「言葉による家庭内暴力の現場を目撃しただけでー」
「あたし達はなにもしてませーん・・・」
「?・・・どういうこと?」
流石の名軍師も訳が分からないらしい。うふ、ちょっと嬉しい・・・かも。
「あー・・・毛利家じゃよくあることらしいから・・・愛様はいいです」
「うち無関係ですから・・・寝かして下さい」
虎子がだらしなく寝返りを打つ。
「・・・まあ、無関係なら向こうに任せるからいいけど。昼には起きなさいよ」
愛様はそう言って、障子を閉めてくれた。理解のある上司ステキです。
「にしてもさぁ・・・」
「んー・・・」
「あれは姉が妹を可愛がってるというよりいじめだよねぇ」
「んー・・・あたしもう少し寝るわぁ」
虎子も眠そうだ。あたしももう少し。
ゆがんだ愛情表現をする姉を持つきくさんに、合掌。
風呂は女の社交場(その後)へ
※以下、台詞のみでお送り致します
「ごっくらくよねぇ・・・」
応えるように隣で相棒が呟く。
湯船の縁に身体を預ける。
広い浴場に、私と虎子の二人だけ。
ランスを頂点とした織田家は、各地の治安や政情回復に忙殺されていた。
まあ実際にはウルザさんや愛様、真田様や義景様達が知恵を絞って、信頼できる武将や元領主達に各地で実施させていてランス自身は相変わらずだったらしい。
(私はその『相変わらず』な現場は見てないけれど愛様の溜息からまあ間違いないだろうと思う)
私は佐渡と尾張を行ったり来たりだったのだけれど、今回は愛様から佐渡の状況を報告するよう召集がかかっていた。
私達の出番の会議は午前中で終わってしまったので今日は早々に上がらせてもらい虎子と大浴場へしけこんでいたのだ。
ところで私と虎子は気色悪い間柄ではなく単に仲の良い同僚なのでそこんとこよろしく。
湯はぬるめ。
これなら何時間でも入っていられる。
「夕べ尾張着いていきなり今朝会議だったからしんどかったわねー」
「でも午後にゃあこーしてノンキにお湯に浸かってられるんだからまあ良い御身分でしょ」
手拭いで軽く顔を拭く。
「ところで謙信様、また少し可愛くなってない?」
「あー思った。髪の結い方もちょっと変わったよね」
「前のキリッとした謙信様も美形って感じでステキだったけどねー、今はすっごい可愛いって感じ」
「あー・・・」
武将なんてやってるが、虎子も私も今時の女の子だ。この手のしょうもない話は暇潰しにはもってこいではある。
「戦も無いしね。男出来るとやっぱああなんじゃん?」
「オトコ、ねー・・・」
多分二人して、笑い方とかもろもろ下品なあの男の顔を思い浮かべてる。
それと掛かり結びのように思い浮かぶのが愛様の溜息をつく顔。
「・・・・・・愛様、大変よねー」
「・・・んー。とは言え半分は自業自得かと」
そーいやそーかと話していると、がららららと入り口のガラス戸が開けられた。
「あ」
「・・・む」
浴場へと入ってきた、ふわふわ髪の小柄な女性と目が合った。
「・・・失礼するぞ」
独り言のように言うと、その人は洗い場へと向かった。
えーとたしか、あの人は毛利てるさん。
前来た時の会議で、愛様となんかバトルやってた人だ。早々に上がってしまおうか、と思っていたらてるさんは簡単に体を流して湯船へ入ってきた。
ふう、とあたしがしたようにてるさんも息をつく。
間の悪い沈黙。
流石に他家の人がいる前で上司たちの与太話をしているわけにもいかない。
なんとなく居心地が悪いので、もう少しうだうだしてたかったけど上がろうかと思ったところでてるさんの方から話を振ってきた。
「おまえ等はあれか。あのデコ女のとこの部下か」
「・・・えーっと。何人か思い当たる方がいらっしゃるんですが」
「ツリ目で、眼鏡の無い奴だ」
これなら愛様一択。
「あ、ハイ」
「あんなのが上司じゃ息が詰まるだろう」
「えーとまあ、あはは。まあ慣れてますし、愛様仕事はきっちりやって下さいますんで」
そーですね、とも言えないし適当な相槌を打ってみる。
てるさんは気持ち良さそうに瞑目しながら呟いた。
「・・・しかしあれだな。謙信は、アレはいい女だな」
「そうですか、有難う御座います」
「あれが相手では、きくもなかなか」
そこまで言って、てるさんはさっきあたしがしたのと同じように一旦手拭いでその小さな顔を拭いた。髪のボリュームのせいかものすごい小顔に見える、いいなぁ。
「苦戦するだろうな」
きく。えーときくさん、って確か妹さん?だったっけ?
「あの失礼ですが、きくさんってあの瞳キラキラした方?」
「いや、これの方だ」
言いながらてるさんが指で目尻を吊り上げてみせる。あぁ、あの方のほうか。
しかしということは、ひょっとしてきくさんもアレなのかしら?
謙信様と同じ病気?
「そうだな。しかしあれは惚れてるというより」
腕組みをする。
可愛い顔してそういう仕草はなんとなくミスマッチ。
「色惚けだな」
はあ。
「・・・・・・どんなところが?」
「ふむそうだな。まあ色々あるが」
てるさんが考えるように天井を見上げる。
「大陸の料理の本が突然増えたな、しかもランスの好物ばかり。朝起きて台所へ行ったらへんでろぱだらけの中できくが寝ていた事もあったな」
「ほほー」
うあ可愛い。
これはまた謙信様とは違った可愛さだ。しかもあの顔、あの喋りでですか。
「箪笥の奥に口紅を隠し持つようになったな。結局恥ずかしいらしくて薄いリップしか使っていないようだが」
「可愛いじゃありませんかぁー」
虎子が果てしなく嘘くさい相槌を打ちながら、私には自分の箪笥の奥を知ってる姉が居なくて本当に良かったと思った。
「他にはどんなところが?」
「そうだな・・・どうやって手に入れたのか知らないが、本棚の奥に大陸の下着カタログを隠すようになったかと思うとその頃から下着の数が異様に増えたな。ランスに呼ばれた日の夕方なんて自室の鏡台の前でえへへだの言ってくねくねしたかと思うと落ち込んだり、見ていて我が妹ながら気色悪いと可愛いの境目だ」
「………」
ダメだ。次、きくさんに会った時に噴き出さない自信が無い。
だのに止まらないのは人の性。
「いやいや、十分可愛いですよある意味謙信様よりも。で、もっとないですか」
「ふむ…本棚の奥と言えば日記もかなり傑作なんだが、あれは実物を読まないと面白さが伝わらんからな」
「毘沙門天に誓って口外しませんので、それ拝見出来ます?」
虎子がかなり激しく毘沙門天の格を下げたが正直私も見てみたい。
「ま…妹のプライベートだからな。見せるとは言えないんだが、さて、そろそろ上がるか?日本酒くらいあるんだろう」
酒と取引ってことですか。
「もちろんいいのがありますよ」
「じゃ、あたし達も」
三人でざぱ、と湯船から上がるのと同時にがらら、と浴場の扉が開いて現れたのは。
「「ぶふっ」」
「・・・噂をすればなんとやらだな」
てるさんが私たちだけに聞こえるように呟いた。
「な、なんだよ」
自然三人の視線が集まる先で、きくさんが手拭いで隠すように身をよじる。
「失礼しました、ちょっと湯冷めしてしまいまして」
「すみません」
二人して鼻元を押さえるフリして死ぬほど笑いそうになってる顔を隠しながら、すれ違いざまにきくさんをチラ見した。
すごい。
ぷるっぷるでばいんばいん。
いわゆる美巨乳。名取様のもすごいけど。
ちなみに謙信様のは私の中では美乳に分類されている。
あと私たちのモノについては触れてくれるな。
(なにあれ)
(スゴイよね)
虎子とアイコンタクトして脱衣所へ上がろうとしたところで、てるさんが浴場を振り返った。
「ああ、きく」
「ん、なんだよてる姉」
「我はこいつらと酒を飲んでいる。まあゆっくり浸かって、気が向いたら来るがいい」
「?・・・ああ、わかった」
きくさんがきょとんとしている。まあ珍しい取り合わせだし無理もない。
がらがらぴしゃ。
「でもなるべくごゆっくり~」
引き戸を閉めたところで虎子が小声で呟くと、三人して含み笑いをもらす。
「では我は部屋に居るから、それなりにいいのを持って来い」
「はーい」
てるさんに軽く返事をして、上杉家用倉庫へ向かう。他家の偉い人とこんなに親しく話したのは初めてだ。
「てるさん、恐そうな人だと思ったけどね」
「割とそうでもないね」
「でもあんな姉は」
御免だけどね、と言って軽く笑った。
やっぱ純米よね。吟醸か、大吟醸・・・は偉い人同士の贈答用だから流石にまずいか。じゃ、吟醸で無名のいいやつを。明日は休みだし、今日は心置きなく。
「それでは上杉家、直江愛が腹心勝子と虎子。いざ毛利陣へ」
「突撃ーっ」
久々に浮かれた気分で、パタパタと毛利家の部屋へあたし達は駆け出した。
--------------------------------
ぱたん、と障子が開けられる音がした。
「ほら、あんた達休みとは言え何時まで寝てるの」
「あー・・・愛様。おやようございます」
「おはよう、ね。寝起きのところ悪いんだけど貴女達、毛利のきくさん知らないかしら。夕べから失踪しちゃってるらしいんだけど、てるさんと貴女達と一緒に飲んでたらしいじゃないの」
寝転んだまま、虎子に呼びかける。
「あ・・・あー、虎子ぉ・・・。きくさん、いなくなっちゃったって」
「んあ・・・?」
虎子も寝ぼけてる。
「やっぱかぁー」
「そーよねー・・・ふぁ」
ぐでー、としたまま二人で答える。上司だよなぁ、まずいよなぁこの態度と思うけど体が無理。
「何か知ってるの?貴女達」
「えっとぉー」
「言葉による家庭内暴力の現場を目撃しただけでー」
「あたし達はなにもしてませーん・・・」
「?・・・どういうこと?」
流石の名軍師も訳が分からないらしい。うふ、ちょっと嬉しい・・・かも。
「あー・・・毛利家じゃよくあることらしいから・・・愛様はいいです」
「うち無関係ですから・・・寝かして下さい」
虎子がだらしなく寝返りを打つ。
「・・・まあ、無関係なら向こうに任せるからいいけど。昼には起きなさいよ」
愛様はそう言って、障子を閉めてくれた。理解のある上司ステキです。
「にしてもさぁ・・・」
「んー・・・」
「あれは姉が妹を可愛がってるというよりいじめだよねぇ」
「んー・・・あたしもう少し寝るわぁ」
虎子も眠そうだ。あたしももう少し。
ゆがんだ愛情表現をする姉を持つきくさんに、合掌。
風呂は女の社交場(その後)へ
※以下、台詞のみでお送り致します