ふむ、という言葉と共に目の前の銀髪が右に傾いて揺れる。
「つまり『私のことが知りたい』と、そういうことか?」
「つまりそういうことデス氷室サン」
屋上行き階段の踊り場に呼び出したはいいものの、緊張に焦りを加えて言語意味共に不明瞭なところを身振り手振りで全く補えてない俺の説明と要望を、9文字で非常に分かりやすく表現してくれる氷室はきっといい奴だ。
「白だが」
「・・・は?」
あれ、氷室のこの笑顔になんか見覚えが。
「今日は、レースのついた白だ」
つーか、白って
「はぁぁぁっ!?」
「なんだ、私には白は似合わないと云うのか?それは心外だな」
「い、いやいやいやいやとんでもない!?」
白って白って白って白ってやっぱりコレはアレが白なのか!?レース付きの!?
「私の事が知りたい、と言うからには見たいということか」
「・・・え、えっと・・・!」
こういうときなんて言えばいいんだ?
見たいです、と言ったら俺はスケベ男なのか!?
見たくありません、と言ったら俺は氷室に無関心な失礼な奴なのか誰か教えてプリーズ!
「毎日身に付けるものだからな。衛宮になら見せられる程度には清潔にしていると思うが」
覆い被さる様に詰め寄ってくる氷室に圧されて、気づけば上り階段にへたりこむ。
「とはいえ流石に少しは気恥ずかしい。見せるから、ちょっと目を瞑っていてくれないか?」
「い、いや・・・」
「さあ」
「待って、くれ」
制服のスカートの上の方を摘んで妖しく微笑む氷室。
それを眩しいものを見るように、思わず手をかざして目を閉じてしまう。
2秒。
5秒。
「・・・そうやって、いつまでも目を瞑っていても埒があかないだろう。それに、こうやってずっと見せている私の身にもなってほしい」
氷室の声。
たしかにそれはそうだ。それはあまりにも氷室に失礼だ。
だから、俺は目を明ける。極力直視せず可及的速やかに、氷室のその、おそらくは魅力的にたくし上げられているだろうものを降ろす、べき。
氷室に女の子の恥じらいを守ってもらうべく。
そう、断じてスケベ心ではな――――――
「やっと目を明けたな。これが・・・私のだ」
「・・・!」
恐る恐る明けた眼に飛び込んだのは、レース付きの、真っ白な三角形の布。
その三角に畳まれたハンカチの向こうに見えた氷室の笑顔は、俺の知る限り一番意地悪な笑顔をしていたと思う。